Introduction



・巨木を訪ね歩くきっかけは、たまたま見た新聞記事であった。街の真中に残された小さな神社にあるクスの巨木が、都市計画のために伐採されるという記事を見て、外に出かけたついでに立ち寄って見た。樹齢1000年とも言われる木は、すっかり空洞化していて、痛々しかったが、神々しくもあり、何かしらのエネルギーを発しているような気がした。もともと、山歩きをしていた時期もあり、自然に接することは嫌いではなく、都会よりも田舎のほうが性分に合っていることもあり、少しずつ巨木を見て回るようになった。

・巨木を訪ね歩いていると、常に自然と神社・仏閣詣でをしているかのような錯覚に囚われることがある。これは間違いの無い事実であるし、当然と言えば当然のことである。なぜならば、巨木は人間が大事に保護しないと、その巨大さを維持できない場合が多いし、神社は随分と昔から、今で言うエコロジーを実践してきた。

・日本人は、ずいぶんと昔から自然というものに対して畏れを感じ、敬い奉るような感情を持っている。難しい言葉でいうと「アニミズム」(精霊信仰)と言うらしいが、○○の祟りだとか、バチが当たるとかいった類の言葉を、我々の世代の人間でも、祖父母や両親から幾度と無く聞かされたものだ。

・日本人は一般的に宗教心が無いと言われる。確かにキリスト教徒やイスラム教徒のように生活規範となるような聖書・聖典に類するようなものを持たず、葬式・法要の時だけ仏教徒になり、初詣に行き、クリスマスを祝う。神道という宗教が、神様は一つではないことも原因の一つであろう。

・神話の世界では、神が分身として自然現象や、樹木とかを創造したことになっている。四季を持つ豊かな自然を持つ日本という国ならではの宗教である。 しかし、これは神道という宗教を信じるという問題では無く、DNAの中に深く刻み込まれた、自然な感情なのかもしれないと思う。



・一般的には、樹周(地上130cmの位置での幹回り)3m以上と言われる。これは、巨木愛好家のバイブルとも言える環境庁編「日本の巨樹・巨木林」にそのように定義されており、巨木を愛する諸先輩の方々もそれに倣っておられるようなので、私も基本的にはそれに従った。もっとも、一部そうでないものも含めている。

・とは言いながらも、見た本人が大きいなあ、と思えば巨木でいいんじゃないでしょうか。